落日燃ゆ (新潮文庫)


【評価】 平均評価: 4.5/ 総数: 39件
[5点] 現代に求められる大人の生き方
 日中戦争及び太平洋戦争は、私から日本の歴史、文化を断絶しています。それは
あまりにも痛ましい記憶だからなのでしょうか。この出来事に関わった人たちが
まだ存命しており、利害が衝突して歴史として客観的な評価ができないことから
公的な教育から封印されていることが大きいのではないでしょうか。

平成から最も近い昭和史を学ぶ事は、教育されることに解放された大人だけに
許された特権になっているように思います。その意味で本作は良質な教科書の
役割を担ってくれる数少ない良書です。

 解説を読むと筆者は本書を『小説』と位置付けていますが、私は戦中を生きた
広田弘毅の生き様を辿りながら、どういった経緯で日本が悲惨な戦争に突き進んで
いったかを政府内部から語るノンフィクションとして読みました。広田の「自ら計
らわぬ」生き方は、一見消極的な印象を受けます。しかし彼は、目の前の課題に対
して自分の価値観に従い、全力で取り組む姿は実に主体的に感じました。この誠実
さは現代のローモデルとなり得るのではないでしょうか。彼に比べると外務省同期
で戦後初の首相になった吉田茂が小さく見えます。また彼は自分の家族との時間を
大切にする良き家庭人であったことも団塊世代には非常に少ない、これからの大人
の生き方を示しているように思います。

彼は戦前戦中に外相、総理大臣を歴任し東京裁判で唯一文官として極刑を受けます。
戦争を止められなかった自分の責任を受け入れ、一切の弁解をしない頑固さは大人
のダンディズムを感じます。その意味でも大人の良書足るのではないでしょうか。 (2008-04-14)
[4点] 知らないことが多くて
近代史も知らないことが多いのですが、少し図式的すぎるかもしれないけど一通りの流れはこれでわかります。史実だから仕方ないのですが、最後までカタルシスが得られないけど、廣田弘毅という人の爽やかな潔さだけが救いか。
大正デモクラシーから太平洋戦争に突入していく日本の近代史をちゃんと俯瞰したくなりました。 (2008-02-04)
[5点] 見事な人の見事な描写
広田弘毅のひととなりを、読者をぐいぐいと引っ張っていく城山の筆致は見事である。
また、対象となっている広田の人物像は、目指せるものでも直截的に育てられるものでもないが故に見事だと言わざるを得ない。安易な人格描写を許さないようでいて、深く心に響く。少ない言葉のひとつひとつが、このタイミングでなぜこんなことが言えるのか、と感服させられる。それは言葉を発すべき時宜を選びに選んでの発言だからでもあろう。
(2008-01-20)
[5点] 広田弘毅に感服・・・。
広田は「物来順応」の精神を最後まで貫いた。これほどまで私心なく職務を全うできる日本人が今の世にいようか。
軍が暴走していった状況が空気として感じ取ることができた。
戦争を止めようと必死に戦った広田がA級戦犯として処刑されたとは今もって信じがたい。
また、アメリカの連邦裁判所内でも、「極東軍事裁判」を戦争遂行の一部として日本の戦力の弱体化を狙って行った敵対行為と認める見解があったということも興味深い。
日本だろうがアメリカだろうがまともな人はまともなのだ。 (2007-12-23)
[5点] 前三後一
 再生の際には、誰かが最後まで操縦桿を握って、ソフトランディング
させることが重要です。 (2007-11-20)
【関連商品も見たい!】
 ・ 男子の本懐 (新潮文庫)
 ・ 指揮官たちの特攻―幸福は花びらのごとく (新潮文庫)
 ・ 官僚たちの夏 (新潮文庫)
 ・ 粗にして野だが卑ではない―石田礼助の生涯 (文春文庫)
 ・ 雄気堂々 下  新潮文庫 し 7-4

Tag : 城山三郎