シュナの旅 (アニメージュ文庫 (B‐001))

【紹介文】
   宮崎駿が描き下ろしたオールカラーの絵物語。1982年「アニメージュ」にて『風の谷のナウシカ』の連載を開始したのとほぼ同時期に描かれた作品である。水彩の淡い色をいくつも重ねて着色した絵が美しい。

   作物の育たない貧しい国の王子シュナは、大地に豊饒をもたらすという「金色の種」を求め、西へと旅に出る。つらい旅の途中、人間を売り買いする町で商品として売られている姉妹と出会う。彼女らを助けた後、ひとりでたどり着いた「神人の土地」で、金色の種を見つけるが…。どんな状況にあっても、生きようとする人間のたくましさ。強い心だけが生みだすことのできる、やさしさ。そして、弱さと無力さ。宮崎は、短い物語のなかに、そんなものを、ただそのまま描き出してみせる。

   世界観の作りこみとそれを表現する絵の力は圧巻。特に「神人の土地」にあふれる虫、植物、巨人、月の造形には、一切の迷いが見らない。彼の頭のなかに広がる原風景を見せられているようで、生々しいほどの迫力に満ちている。死と生、喜びと恐怖の一体となったこの世界観は、以降の宮崎作品にも幾度となく登場する。

   チベットの民話に感銘を受けた宮崎が「地味な企画」ということでアニメ化を断念し「自分なりの映像化」を行ったものが、本作である。だがアニメという万人に向けた形をとっていれば、また違うものになっていたはずだ。淡々と、厳かに物語が進行する本書の独特の雰囲気は、絵物語という形態であればこその魅力といえるだろう。(門倉紫麻)


【評価】 平均評価: 5.0/ 総数: 46件
[5点] とにかく良かった
けっして難しいことではないんです。まっすぐなんです。
私のたからものです。皆に読んでもらいたいです。 (2008-07-09)
[5点] 宮崎駿作品の原点。初期作品の世界観が凝縮された名作。
たまたま書店にあった本書を手に取ってからウン十年、ずうっとお気に入りの本です。コミックというより、絵本に近いのかもしれません。「ゲド戦記」で使われたのは、キャラクターでお話はコミック版ナウシカに近いと思います。初期の宮崎作品にある冒険と優しさにあふれています。「もののけ姫」以降の作品は商業主義に走りすぎていて、今ひとつ好きになれませんが、この本はずっと宝物のように、ときどき開いては読み返したい傑作です。 (2008-06-17)
[4点] 漫画?絵本?
コレは漫画ってよりも絵本って言ったほうが正しいのかもしれません。
この本からナウシカが生まれたのでは無いであろうかと思うほど似てる部分があります。
今となっては映像化されないのでしょうが、この頃の作品はとても良かった。
宮崎駿映画は出せば出すほど衰えていくような気がします。
私の中では、風の谷のナウシカ、天空の城ラピュタがすべてでありそれを超えるものは、宮崎アニメからは存在、出現しないという事を感じています。
ただ、原点の一つではないかと思うこの作品や、ルパン三世カリオストロの城、未来少年コナンは何回見ても楽しいものです。
(2007-10-09)
[5点] さわやかに感動できる名作
世界観はナウシカとかなり似ていますが、ナウシカは壮大なテーマをじっくり語った分、
政治的哲学的な要素が難解であったり、モノクロの細かい絵柄が読み辛い印象がありました。

一方シュナの旅は、難しい要素をとことんそぎ落として、宮崎アニメのエッセンスを凝縮したような作品です。
オールカラーで水彩画の優しいタッチが映像的で美しく、子供にもオススメできます。

随所で後のジブリ作品をいろいろ連想できるのも楽しいです。
主人公とヒロインはナウシカ、アシタカの雰囲気を持っているし、他はヤックル、ジゴ坊、サツキとメイなどなど。

短いですが、さわやかに感動できる素晴らしい作品です。 (2007-09-18)
[5点] ジブリ映画 『ゲド戦記』 の原案
ジブリ映画『ゲド戦記』のストーリー原案として、再び注目された佳作。

共通するストーリー。

 最初、娘は少年に助けられた。
 やがて少年は心が闇に支配されるが、
 逆に少女が少年の「心の光」を取り戻す。

映画の舞台設定は小説「ゲド戦記」(グウィン作)からとられているが、大筋は、この絵物語「シュナの旅」の影響の方が強い。

ストーリーだけでなく、砂漠に打ち捨てられた船のシーンや、
廃屋を覗き込むシーンのカットはなどは同一だったりして、
映画『ゲド戦記』との類似点を探すのも楽しい。
また、ヒロインの描写は、のちのナウシカを想起させる。

ジブリアニメが好きな方は、是非とも手元に置いておきたい一冊です。 (2007-05-24)
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